SUPER VINTAGEでは、北欧を中心としたプレステージヴィンテージ家具、日本の有田からは美術調度品、フランス・パリからはデヴィッド・リンチ氏のオリジナル石版画と、幅広いアイテムを取り扱っております。





前回に引き続き今回もその数あるアイテムの中から、注目を集めているアイテムをご紹介いたします。




1つ目にご紹介するのは、アルネ・ヤコブセンがデザインしたModel:3316、通称エッグチェア。

 

 

エッグチェアは先日ご紹介したスワンチェアと同じく、デンマークにあるSASロイヤルホテルのロビースペースに設置するために1958年にデザインされた、北欧デザインを代表する作品のひとつです。


1950年代後半、ヤコブセンはこのホテルの建物からドアノブ、カトラリーにいたるまですべてをデザインし、エッグチェアやスワンチェアもこのトータルなデザインソリューションの一部として製作されました。


こうしたヒストリーからも、ヤコブセンの完璧主義の性格と一切の妥協を許さない、デザインにかける真摯な姿勢が伺えます。


 

完璧主義のヤコブセンは、エッグチェアのフォルムにも強いこだわりを持っていたそうで、粘土で当初そのフォルムデザインを作成した後、エッグチェア完成までの間は彫刻家のように自身のガレージでワイヤーと石膏を使用した試作を繰り返し、シェルの完璧なフォルムを追及していったそうです。



 

 

当時では画期的だった発泡ウレタン(詳しくは一つ前のスワンチェアのブログをご覧ください。)を加工して製作されており、その左右を囲んだフォルムが特徴的です。


当時は脚はアルミで製作されていましたが、1973年以降はアルミの台座とスチールの脚を使うようになっています。



 

 

エッグチェアはその未来的な形状から、現在においても「モダンな美」という言葉がピッタリの印象です。

発表から60年以上たった今日も色褪せることのない近未来性は、ヤコブセンのそこ知れないデザイン力と卓越した先を見通すセンスを感じさせます。


またビジュアルの美しさだけではなく、人間の体をやさしく包みこみ快適で、安心感のある座り心地をご体感いただけます。




また、エッグチェアを正面から見ると面白いことがわかります。

実はこのチェア、左右対称に作られていません。

よく見ると、背もたれの右側の方が左に比べて高く上がっていたり、左右でアームの開きの大きさが異なっていることがわかるかと思います。

 

 

これはなぜかというと、上記で述べた当初ヤコブセンが粘土で作ったエッグチェアの原型を型取りしたものを今もなお使用しているからなのです。




そしてエッグチェアの生地張りは複雑な作業のため機械で行うことができず、60年以上経った今でも一つ一つ人の手で裁縫されています。

 

 

また、その縫い目は実はカーブの中心部ではなく若干外側に来るように設計されており、人が座った時に縫い目の凹凸が邪魔にならないように作られています。

この縫い方は通常よりも非常に手間のかかる縫い方のため、張り職人の腕の高さも問われるチェアです。


1脚のエッグチェアを製作するのに、なんと1100針もの裁縫が必要となっています。

量産型の機械生産家具では考えられない、一つ一つ大切に製作されたチェア。




今日、エッグチェアはヤコブセンの偉業を象徴するアイテムの1つとして、またスカンジナビアのクラフツマンシップの記念碑的な作品として世界中で認識されています。






 

 

 

2つ目の作品はボーエ・モーエンセンがデザインしたModel:J39、通称シェーカーチェア。




 

J39は、通称「The People’s Chair(ピープルズチェア=みんなの椅子)/シェーカーチェア」という愛称で広く知られています。




言わずと知れた、長年親しまれているベストセラーチェアとなっており、発表されて以来一度も生産を中止することなく作り続けられているまさにモーエンセンの代表作といえる椅子です。



 

愛称の一つである「シェーカーチェア」という名前は、18~19世紀頃、イギリスから渡米したシェーカー教徒たちが作っていたシェーカー家具にインスピレーションを受けてモーエンセンがデザインをしたことがその由来となっています。




シェーカー家具はアメリカ北東部の木工品とされ、コロニアル様式を単純化したものでした。シェーカー教徒はそこから更に装飾を除き、機能性や耐久性を向上させ簡素でありながら丈夫で長持ちする家具を作り上げたのです。



シンプルで実用的な家具は、質素、勤勉、禁欲を美徳とするシェーカー教徒たちだからこそ生み出すことのできた、洗練された美しさを備えています。

そこには、家具だけでなく建築や服飾等を含めた暮らし全体の調和を目指す、彼ら独特の生活様式も影響していると言われています。

 

 

モーエンセンの「シンプルかつ実用的な家具によって庶民の生活を豊かにする」という信念と合致するシェーカー家具がJ39のインスピレーションとなったことも、この話を聞くと容易に納得できますね。



余談にはなりますが、シェーカー教徒の「シェーカー」という名称の由来は、彼らが集会で礼拝をする際に、高揚した信徒が震えたり、踊ったり、不可思議な言語で話したりすることに由来していると言われています。



 

さらにモーエンセンは、当時流行していた輸入素材を使わず、豊富に取ることができるビーチ材やオーク材を使用し、さらに直線的な木材を使用することで加工の手間を省きコストカットを行うことで、手に届きやすいリーズナブルな価格帯を実現しました。

 

 

座面はペーパーコードで丁寧に編まれており、適度にしなり身体を受け止めてくれます。


流行に左右されない、飾らないデザインを得意とする彼の方向性はこのチェアにもよく現れており、彼のブレない信念とこだわりを感じます。





どちらも世界中でコレクターたちを魅了し続けている名作です。


ぜひ皆様、コンシェルジュルームにてその魅力を直接ご堪能ください。

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