今回のブログでは、前回ご紹介したデンマークの女性デザイナー、ナナ・ディッツェルの代表作である、Model:3296、通称「トリニダードチェア」についてご紹介します。
ディッツェルは、草木や昆虫、貝といった自然界に存在する彼女が美しいと思ったものをデザインに取り入れることが多いことで有名ですが、このトリニダードチェアは、トリニダード・ドバゴの伝統技術である透かし彫りに影響を受け、同島に生息する風鳥(極楽鳥)をイメージしてデザインされています。
背もたれの放射線状のスリットから溢れる光と影から浮かび上がるシルエットは実に美しく、ミラノトリエンナーレを始め世界各国のデザイン賞を受賞した名作椅子としても知られています。
また、トリニダードチェアの素晴らしさは、その美しい佇まいだけではありません。
その絶妙なカーブを描く扇型の背板と、座面の身体を包み込むような形状はとても安楽性が高く、角の無い丸みを帯びた肘掛や、座高44cmと女性やお子様などにも座りやすい高さに設定されいることなど、女性デザイナーらしい座り手への心使いを感じさせてくれる椅子です。
もともとは1992年に「ファンチェア」という名前で製造が開始されましたが、初期のモデルは脚部が木製で構造的にも問題があったため製品化には至らず、1993年に脚部をスチールに変更し、「トリニダードチェア」として製品化されました。
製造メーカーは、50年以上にわたりデンマークのクラシック家具を製造している、FREDERICIA(フレデリシア)です。
フレデリシアはナナ・ディッツェル以外にも、ボーエ・モーエンセンやハンス J. ウェグナーといったといった巨匠の作品から、新進デザイナーの作品まで実に幅広く、時代の流れとともに新しい「名作」を次々と生み出しています。
特徴的な扇形の座面と背もたれの放射線状の透かし彫りのようなデザインは、光を当てることで光と影のアートが映し出されるようになっています。
さらにスタッキングができるなど、使い勝手の良さから世界中で高い評価を得ています。
女性らしい、細やかな気配りと繊細な造形美が合わさった、まさにディッツェルの傑作と言えるでしょう。
ダイニングシーンはもちろん、デスクチェアやベッドサイドチェア、インテリアとして空間のコーナーに置くだけでも部屋の印象をグッと上げてくれます。
その美しい存在感と快適な座り心地を、ぜひ一度試してみてください。