今回はアルネ・ヤコブセンの言わずと知れた名作、セブンチェア(FH3107)について詳しくご紹介します。

 


 

セブンチェアは、1955年にデザインされ、フリッツ・ハンセン社にて製作されました。

現在に至るまでの累計販売個数は700万脚を超えており、世界で一番売れているスタッキングチェアとしても知られています。日本でも、カフェや公共施設、オフィススペースなどでも目にすることが多いですね。

 

 



 

セブンチェアは、メーカーであるフリッツ・ハンセン社を代表するベストセラー商品であるとともに、家具の歴史におけるアイコン的存在でもあります。

 

特徴的なこのチェアのフォルムは、 9層のベニヤで構成される成形合板のシェルによって作られています。強度と柔軟性、耐久性を備えたモダニズムの先駆けと言えるチェアです。

 

 

第二次世界大戦中、資材不足から金属の代用素材を実用化する必要が出てきたことがきっかけとなり、合板の成形技術はこの時期に大きく成長しました。しかし、それでも座面と背面を一体にしたシェル型に成形することは簡単ではなく、その技術が実現したのは1952年にアルネ・ヤコブセンがデザインした「アントチェア」の製作時でした。

 

 

こうして試行錯誤の末に生み出されたヤコブセンの名作アントチェア、そしてセブンチェア。成形合板の流れるような曲線美は、360°どの角度から見ても美しく、完璧主義なヤコブセンだからこそ作ることのできたデザインと言えるでしょう。

 




またセブンチェアは、1963年ルイス・モーレイの有名なクリスティーン・キーラーのヌード写真において使用され、この写真集の出版後にセブンチェアの売り上げが爆発的に増加したそうです。

しかし、実際は使用されたのは本物のセブンチェアではなく偽物だったそうで、当時の写真を見ても背もたれの部分にホールドできる穴が空いていたりと、セブンチェアを見たことがある人からすると明確な違いがあります。

 


出典:ArtBasel

 


しかしこれを機にセブンチェアが爆発的に人気になったことから、ヤコブセンやフリッツハンセンも恩恵を受けたために訴訟を起こさなかったと言われています。



こうした一つのチェアの歴史を見ても、様々な社会的背景や人々が関わってヒストリーを作っていることがわかりますね。


私たちが普段目にしているこうした家具たちも、デザイナーの様々な思いや苦労から誕生したことを知ると、より日常が豊かに、思い入れのあるものになるような気がします。


次回はセブンチェアと並ぶヤコブセンの名作、アントチェアについてご紹介します。

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