言わずと知れたウェグナーの名作チェアAP19/PP19、通称「パパベアチェア」。
手前に大きく飛び出たアームの先端のネイルに木材が顔を出し、熊が手を広げて愛らしく立っているかのようなフォルムからその名がつけられました。
パパベアチェアは張り職人の腕が試されるチェアとして知られており職人によって座り心地が大きく異なることも特徴です。また、その生地張りはチェアの中でも非常に難易度が高く、同じく生地張りが難しいとされているアルネ・ヤコブセンのエッグチェアのおよそ5倍の時間がかかると言われています。
包み込まれるような座り心地で、座る方の体格に関わらずまたどんな姿勢でも受け止めてくれる他に類のない特別なイージーチェア。ウェグナーが生涯でデザインしたチェアの中でも、このパパベアを他のどのチェアよりも気に入っていたそうで、ウェグナー自身が晩年を過ごした老人ホームにパパベアを持ち込んで愛用していました。500種類以上のチェアをデザインした彼が最期に一緒に過ごすことを選んだチェア。それがこのパパベアチェアでした。
現在はPPモブラーから復刻版である「PP19」が制作されていますが、SUPER VINTAGEで取り扱っているのは、1951年〜1977年の僅かな期間のみ製作されていたAPストーレン製のヴィンテージ品「AP19」です。
PP19とAP19には実はデザインにいくつかの違いがあります。
まず一番の違いはアーム先端のネイル(木)部分。APストーレン製作のパパベアチェアのネイルは、下記画像のように上下で2つに分かれた無垢材をジョイントして削り出しているのが特徴です。木材はチークやオーク、ロズウッドなど様々なタイプがありますが、SUPER VINTAGEで取り扱っているのは、ネイルがチーク材、脚がオーク材のものです。
画像をよく見ていただくと、上と下で木の色味や木目が分かれているのがわかるかと思います。
一方で現行ののPPモブラー製作のネイル部分は、2つではなく1つの無垢材を削り出して製作されています。
また、APストーレン製のパパベアチェアの背もたれ部分トップは、形が緩やかな逆アーチを描いているのに対して、PPモブラーせいの背もたれトップは直線的なラインになっています。さらに、わずかですが全体的なサイズ感も両者で異なります。
前に大きく飛び出したアーム部分とハイバックの背もたれは存在感のある佇まいであり、その最高の座り心地まさにウェグナー作品の中で傑作の作品と言えるでしょう。チェアの内部はポケットコイルに馬の毛、パームツリー繊維、綿、リネンと天然素材を要所要所により使い分けて作られているので、ウレタンのようなヘタリはなくしっかりとしたホールド感です。
生涯をかけて楽しむことができるだけではなく、代々受け継いで行くことのできる、特別なチェア。ぜひその魅力を私たちのコンシェルジュルームにて体感してください。