本日は私たちが扱っている商品の中から、デンマークが生んだモダニズムの巨匠アルネ・ヤコブセンの作品「グランプリチェア・テーブル」についてご紹介します。
グランプリテーブルとチェアの製造は、1872年に創業したデンマークの老舗家具メーカーFRITZ HANSEN(フリッツ・ハンセン)により1920年代初頭に行われました。
フリッツ・ハンセンは、ヤコブセン以外にもハンス・J・ウェグナーやピート・ハインなどの、数多くの名作家具を生み出しているメーカーです。
グランプリチェアは1957年のミラノで開催される美術展覧会「トリエンナーレ」に出品され、展覧会の最高賞であるグランプリを獲得したことがその名前の由来となっています。
トリエンナーレは、イタリア国内だけではなく国際レベルで通用するカルチャー・インスティトュートとして設立されました。 デザイン・建築をはじめとして、ヴィジュアルアート・サイエンティフィックアート・パフォーマンスアートなど、文化や言語の違いを越え、様々な才能のある逸材たちの魅力を1箇所に凝縮し、それぞれの独自の思考から革新・拡大していくことを目的として開催され、その祭典は今日も実在しています。
ヤコブセンはチェアと並行してテーブルもデザインしましたが、こちらは生産上の問題でわずかな期間しか販売されず、その後は生産されませんでした。
多くのファンからの要望を受け、フリッツハンセンでは2017年から60年の時を経て幻の名作グランプリテーブルを復刻しましたが、こちらは当時のヴィンテージで形が円形とおそらく日本に1台しか存在しない、まさに幻の一品です。
グランプリチェアは背もたれのトップが二つに分かれたユニークなデザインが特徴です。
プライウッドで形成された適度にしなりのある背もたれは、座った際に優しく体重を吸収してくれます。
美に対して一寸の妥協も許すことのなかった完璧主義のヤコブセンだからこそ到達することができた、シンプルかつ一度見たら忘れることのできない、究極の造形美です。
当時は木材の接着技術がすすみ、大きなパーツを接着して組立られるようになってきていました。ヤコブセンはこの最新技術をいち早く取り入れ、 座面も脚部も木製でデザインした前進的なチェアとして、このグランプリチェアを発表したのです。
木は鉄よりも強度が下がるため、木製でありながら強度を確保するために、ヤコブセンは太くなりがちな円形状の木脚部分の3箇所を削り、断面を三角形に近い形状にすることで重苦しさを取り除き、繊細なデザインに仕上げています。 多数の失敗と研究の末、完成形となった脚は、合板の薄い層が31回も重ね合わせて作られました。脚部の外側の2つのカーブは、座面との接着面ができるだけ広く丈夫さを確保できるように、 座面の裏側に届くところでフラットにされています。
グランプリチェアは、製造工程が複雑でかなりのコストが他のチェアより大きくなってしまうこと、脚部の耐久性不足のため破損する構造上の課題点などがあり、アントチェアやセブンチェアと比べて当時は大きな成功を収めることはありませんでした。 やがて製造ラインから外れ、 幻の椅子となりました。
そのため、現在でもフリッツ・ハンセン社から製造はされていますが、ヴィンテージ品は数あるヤコブセンの名作の中でも特に希少性が高く、今後はさらにその価値が上がっていくことが予想されます。
ぜひみなさまこの名作をコンシェルジュルームにて、ご自身の目でご覧くださいませ。
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